筋トレこそが最強の薬である。

京大バーベル部卒の薬剤師が筋トレや食事法中心に、健康に役立つ情報を紹介します。

筋肉痛に役立つビタミンの種類と量。

要約

・ビタミンCとビタミンEを定期的または運動直前に摂ると効果的である。

・ビタミンC単体では筋肉痛に役に立たないかもしれない。

ビタミンDの大量摂取は筋肉の破壊を促すかもしれない(ただし筋肉にはよい)。

 先の記事では筋肉痛に役立つアミノ酸の種類とその摂取量を紹介しました。次に身近なビタミンが筋肉痛に役立つかどうかを紹介しようと思います。

 

ビタミンCとビタミンEを定期的または運動直前に摂ると効果的である。

 ビタミンの機能として重要なものが抗酸化作用です。特にビタミンCやビタミンEは抗酸化作用があることで有名です。また、筋肉痛の要因として活性酸素が挙げられます。よって、ビタミンの摂取で筋肉痛が抑えられる可能性があるといえます。

 そして、ビタミンC1000mgとビタミンE400 IUを定期的、かつ運動直前に摂った場合に筋肉痛の低減が見られたという研究が実際に存在します(2015  Int J Sports Med. Does combined antioxidant vitamin supplementation blunt repeated bout effect?)。

 この摂取量はサプリメントで安価かつ簡単に摂れるので、試してみてもよいでしょう。

ビタミンC単体では筋肉痛の軽減には役に立たないかもしれない。

 それではビタミンC単体を摂った場合はどうなのでしょうか?昔、京都府立大学で栄養学を教えている先輩からも聞いたのですが、実はその効果はあまり芳しいものではないことが示されているのです。

 まず、1日3回、1回1000mgのビタミンCを摂った場合に筋肉痛には効果がないことが示されています( 2006 . J Sports Med Phys Fitness.The effects of vitamin C supplementation on symptoms of delayed onset muscle soreness.)。

 それどころか、トレーニングの2時間前にビタミンCを1000mg摂取すると筋肉痛の軽減に役に立たないばかりか、筋肉の回復が遅れてしまったという結論に至りました(2006 Br J Nutr. Ascorbic acid supplementation does not attenuate post-exercise muscle soreness following muscle-damaging exercise but may delay the recovery process.)。ビタミンCの抗酸化作用によって、筋肉の回復に用いられる経路が減弱した結果、筋肉の回復が遅れたのではないかと考えられています。

 これは筆者の推測ですが、ビタミンCはビタミンEと相補的な作用があるので、ビタミンC単体では抗酸化作用のバランスがとれず、筋肉痛の軽減に役に立たなかった可能性もあると思います。

 いずれにせよ、運動の2時間前にビタミンCを単体で摂ることは避けた方がよいでしょう。

ビタミンDの大量摂取は筋肉の破壊を促すかもしれない(ただし筋肉にはよい)。

 ビタミンDは健康にとても重要な栄養素です。ビタミンD血中濃度が低い人は認知症などの重大な疾患のリスクが高いという論文もあるくらいです。

 サプリメントで摂ることにも一定の有効性が示されており上気道感染の予防(のどの風邪と考えてください)にも役立つ可能性があることを有力医学誌でも紹介されており(2017 BMJ.  Vitamin D supplementation to prevent acute respiratory tract infections: systematic review and meta-analysis of individual participant data.)、サプリメントとして摂ることも意義があると考えてよいでしょう(私も摂っています)。

 筋力トレーニングによる筋力の向上を助けることが出来るという論文(2017 BMJ Open. The effect of combined resistance exercise training and vitamin D3 supplementation on musculoskeletal health and function in older adults: a systematic review and meta-analysis.)もあり、筋肉痛にもなんらかの影響があることが考えられます。

 その答えを示した論文が2013年に栄養学の専門誌Nutrients. にて発表された「Vitamin D2 supplementation amplifies eccentric exercise-induced muscle damage in NASCAR pit crew athletes.」という論文です。

 しかし、結果は意外なものであり、ビタミンDサプリメントは筋肉痛には特に影響がなく、それどころかミオグロビンやCPKといった筋破壊の指標が上昇していることさえ示されたのです。ネズミの実験ではむしろ筋肉の保護に役立ったので、この結果は意外であるとしています。

 この論文では1日3800IUというかなりの量を摂っています。通常のビタミンDサプリメントは1日1000IU程度含まれていることが多いので、このような結果になる可能性は低いかもしれません。また、筋肉痛自体には影響はなく、筋肉の発達には役に立つことという報告が多いことから、むしろ摂っておいた方がよいサプリメントだとは思います。

 よって、筋肉痛の軽減に役立てるならばビタミンC1000mgとE400 IUを運動をしない日は食事とともに(ビタミンEの吸収は空腹時は下がる)、運動をする日は直前に摂ることがよいということになるでしょう。