すべての短鎖脂肪酸が体によいわけではない。
要約
・短鎖脂肪酸の中でも、プロピオン酸は肥満や糖尿病を引き起こす恐れがある。
最近、腸内環境とダイエットを関連づけたサプリメントが多くみられます。確かに腸内環境と肥満や生活習慣病は密接に関係しているという論文は多数でており、おそらくこれからますます重要な研究となるでしょう。
しかし、「短鎖脂肪酸ならなんでもダイエットに役立つ!」というのは早計な考えです。例えばお酢の主成分である酢酸は肝臓の脂肪を燃やし、白色脂肪をエネルギー消費をしやすいベージュ型脂肪細胞変換し、食欲を抑える作用があるというダイエットに役立ちそうな性質がある一方で、白色脂肪の脂肪分解を抑えるというダイエットには困った性質も持ち合わせています(1)。
そればかりか、短鎖脂肪酸の中には明らかに悪玉ということが示されている物質まで存在します。その名はプロピオン酸です。プロピオン酸は炭素数3の直鎖カルボン酸で、食品添加物として防腐剤に用いることがあります。しかしながら、このプロピオン酸は
・マウスでの実験でプロピオン酸はグルカゴンというホルモンを増加させ、血糖値の増加やインスリンの効きを悪化させる。
・マウスにヒトが食品添加物として摂る量のプロピオン酸を与えると、体重の増加につながる。
・ヒト試験でプロピオン酸の摂取はインスリン抵抗性の悪化の原因となっており、逆にプロピオン酸の血中濃度が低下はインスリン抵抗性の改善と関連している。
ことが示されたのです(2)。どちらかというと私はあんまり食品添加物については範馬勇次郎の意見に賛成しているのですが(気になる人は「毒も喰らう 栄養も喰らう。両方を共に美味いと感じ血肉に変える度量こそが食には肝要だ。」で検索してみよう!)、このプロピオン酸は極力避けようと思うようになりました。
これからの腸内環境の改善研究においては、プロピオン酸は出さずに他の善玉の短鎖脂肪酸を選択的に生産してくれる菌の利用が重要になってくると思います。
参考文献
(1)2019 Nature metabolism「Microbial regulation of organismal energy homeostasis」
(2)2019 Sci Transl Med.「The short-chain fatty acid propionate increases glucagon and FABP4 production, impairing insulin action in mice and humans.」