アルギニンと成長ホルモン②筋トレ前に摂ると逆効果かもしれない
要約
筋トレ前にアルギニンを摂ると、運動による成長ホルモン増加作用が損なわれてしまう恐れがある。
筋トレ初心者だったころの私はアルギニンは成長ホルモン増加作用があるということを薬理学かなにかの本で発見して飲んでいました。アルギニンはとても不味い(正確には苦い)のですが、これも筋肉のためのがまんしていました。しかしながら、アルギニンの成長ホルモン増加作用は注射によるものであり、筋トレ前に飲んで効果があるかどうかもわからず飲んでいたのでした。そして、その努力はもしかすると逆効果だったのかもしれません。なぜなら、筋トレ前にアルギニンを摂ると、成長ホルモンホルモンには逆効果である可能性が高そうだからです。
この理由を一目で示したのが以下の図です(1)。これは筋トレを行っている男性を対象として、運動およびアルギニンの摂取が成長ホルモンに与える影響を調べています。左からプラセボ、7gのアルギニン摂取、筋トレ、7gのアルギニン摂取と筋トレの組み合わせとなっています。
文献(1)より引用
面白いことに、アルギニンサプリメントや筋トレは単独では成長ホルモン増加作用がある一方で、アルギニンと筋トレを組み合わせると相加効果があるばかりか筋トレ単独の場合よりも成長ホルモンの増加が鈍化していることがわかります。成長ホルモン目的であるならば、筋トレ直前にアルギニンを摂るのは逆効果と言えてしまいそうです。
なぜこのようなことになってしまったのでしょうか?この現象はまだよくわかっていないのが実状です。
「アルギニンが成長ホルモンの負のフィードバック機構に(詳しくは生物系の人に聞いてみよう)影響しているのではないか?」
という仮説のもと行われた研究では、アルギニンは成長ホルモンの分泌促進に関してマイナスの影響は示さなかったことから、その可能性は否定されています(2)。よって、未だにメカニズム不明という状況です。
というわけで、少なくとも成長ホルモン目的ならば筋トレを行う直前はアルギニンを避けた方がよいということになります。私が知る限りでは、単独で運動と組み合わせることで成長ホルモン分泌効果を促進させるのはGABA(3)とα-GPC(4)ですが、GABAは3000mg、α-GPCは600mgとかなりの量を摂取しており、これは予算に余裕がある人のみ行うほうがよいでしょう(GABAをこれほど大量に摂って運動して大丈夫なのか?と
思いますし)。どのみち筋トレで成長ホルモン増加が期待できるので、こだわりがなければフツーに筋トレのみがよいと思います。
さて、このままではアルギニンサプリを販売している会社の人に怒られてしまいそうなので(笑)、近々、「アルギニンに他の成分と組み合わせれば成長ホルモン増加作用が期待できるかも」という話を紹介しましょう。
参考文献
(1)2006 J Appl Physiol 「Oral arginine attenuates the growth hormone response to resistance exercise」
(2)2014 International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism「Oral L-Arginine Before Resistance Exercise Blunts Growth Hormone in Strength Trained Males」
(3)2007 Medicine & Science in Sports & Exercise「Growth Hormone Isoform Responses to GABA Ingestion at Rest and after Exercise」
(4)2008 Journal of the International Society of Sports Nutrition「Acute supplementation with alpha-glycerylphosphorylcholine augments growth hormone response to, and peak force production during, resistance exercise」