筋トレこそが最強の薬である。

京大バーベル部卒の薬剤師が筋トレや食事法中心に、健康に役立つ情報を紹介します。

高容量のビタミンDサプリメントはダイエットに逆効果の恐れ

要約

・中年男性が高容量ビタミンDサプリメントを摂るとインスリン感受性の低下を引き起こした

・血中ビタミンD濃度が低い人の場合は、高容量のビタミンDサプリメントを摂ると腹の脂肪が増えてしまった

ビタミンDはカルシウムの吸収や骨の健康維持に重要なビタミンであることが良くしられています。また、多くの研究からビタミンDが不足している人はがん、糖尿病、心血管病や認知症などさまざまな疾患のリスクが高いことが知られており、とても注目されているビタミンです(1)。そのため、ビタミンDサプリメントでさまざまな疾患が予防できるのではないかと期待されています。

 しかしながら、ここ最近でも有力医学誌ではビタミンDサプリメントを摂取しても糖尿病や心血管病のリスクに特に効果がないという発表が相次いでいます(2,3)。ビタミンDは安くて服用しやすいために大きな期待がかかっていましたが、残念な報告も多いようです。そればかりか、大量のビタミンDの摂取は逆に太る恐れがあることさえ示されたのです。

 2019年に発表された論文では(4)、20,000 IUという相当量のビタミンDが中年(平均年齢45歳)男性対象血糖コントロールや体組成に与える影響を調べました。その結果は驚くべきことで

インスリン感受性が低下した

・実験開始時に血中25(OH)D (要するにビタミンDのこと)濃度が50 nmol/L 未満の人は体脂肪や腹回りの脂肪が増えてしまった

という期待とは逆の効果となってしまいました。ビタミンDは薬理学的には筋肉を増やすことが期待されているので(5)、このような結果になってしまったのは驚きです。しかしながらこの試験は参加者200人とこの手の試験にしてはかなり多く、信頼性は高そうです。

 ビタミンDの欠乏は公衆衛生上危惧されていますし、一部効果がでている報告も見られます。しかしながら、20000IUという推奨量をはるかに超えるビタミンDの常用は健康のみならず、ダイエットにも逆効果になる恐れがあるということは知っておいた方がよいでしょう。「メガビタミン理論」も注意をしなければならないという一つのエビデンスをこの論文は提供してくれているのです。

参考文献

(1)2017 Rev Endocr Metab Disord.「The vitamin D deficiency pandemic: Approaches for diagnosis, treatment and prevention.」

(2)2019 N Engl J Med「Vitamin D Supplementation and Prevention of Type 2 Diabetes.」

(3)2019 N Engl J Med「Vitamin D Supplements and Prevention of Cancer and Cardiovascular Disease.」

(4)2019 Nutrients「Effects of Vitamin D Supplementation on Body Composition and Metabolic Risk Factors in Men: A Randomized Controlled Trial」

(5)2015 Biomed Res Int.「Vitamin D: a review on its effects on muscle strength, the risk of fall, and frailty.」