筋トレこそが最強の薬である。

京大バーベル部卒の薬剤師が筋トレや食事法中心に、健康に役立つ情報を紹介します。

アルギニンと成長ホルモン①単独で摂取するどうなのか?

要約 運動を組み合わせない場合、成長ホルモン目的でアルギニンサプリメントを摂る場合は以下のことを留意したほうがよい

成長ホルモンを増やすという報告とそうではないという報告がある

・1回5~9g摂取することが多いので、目安にするとよいかもしれない

・1回13gという大量の摂取は効果がない

  トレーニング愛好家の中でよく用いられるのがアミノ酸です。その中でアルギニンは俗に「成長ホルモンを増加させる作用がある」と呼ばれ、特にボディビルダーに好まれてきました(ボディビルダーはパンプ目的のこともありますが)。

 成長ホルモンは脂肪燃焼を促進し筋肉を増やす作用があることから(1)、スポーツ選手だけではなく、美容目的で増やしたいという人も多くいます。そのため成長ホルモンを増やすという文言は実に魅力的に思います。それでは、成長ホルモン目的でアルギニンを摂取することは果たして意味のあることなのでしょうか。

 アルギニンはソマトスタチンと呼ばれる成長ホルモン抑制因子を抑えることで成長ホルモンを増加させる働きがあります(2)。そのため成長ホルモンの分泌がうまくいっているかを調べるためにアルギニンを用いることもあります。しかしながら、この検査は注射でアルギニンを投与するものであり、サプリメントとして摂取する場合に効果があるかどうかは議論がわかれています。

 実は口からサプリメントとしてアルギニンを摂取した場合効果があるという報告とないという報告があり、本当に効果があるかどうかはよくわからないのが実状です。男性を対象とした試験では効果がなかったという報告(3,4)が複数ある一方で、閉経後女性では成長ホルモン増加作用があったという報告もあります(5)。どうやら性別やホルモンの状況によって、アルギニンが成長ホルモンに与える影響は変わってきそうです。

 さらに、成長ホルモン増加に役立ったという文献をみると、5g、9g、13g摂取した場合には5g、9g摂取の場合に成長ホルモン増加作用が見られた一方で、なんと13g摂取した場合は効果がないという結果となっています(6)。成長ホルモン目的でアルギニンを利用する場合は、やみくもに大量に摂ればよいというものでもないことがわかります。

 このようにアルギニンと成長ホルモンの関係はなかなか一筋縄ではいかないものなのですが、これに運動やほかのアミノ酸を組み合わせるとさらにややこしいことになります。場合によってはアルギニンが逆効果になるという話もあったりします。これに関してはまたまとめることにしましょう。

参考文献

(1)2013 Sports Med「Obesity, Growth Hormone and Exercise」

(2)1988 Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism「 Arginine stimulates growth hormone secretion by suppressing endogenous somatostatin secretion. 」

(3)2011 Appl. Physiol. Nutr. Metab「The acute effects of a low and high dose of oral L-arginine supplementation in young active males at rest」

(4)2007 Arq Bras Endocrinol Metabol.「[Effect of L-arginine supplementation on secretion of human growth hormone and insulin-like growth factor in adults].」

(5)2000 J Lab Clin Med 「Endocrine and lipid effects of oral L-arginine treatment in healthy postmenopausal women.」

(6)2005 Growth Horm IGF Res. 「Growth hormone responses to varying doses of oral arginine.」