適度な運動をしている人は、新型コロナウイルスにも強いようだ
要約
・推奨レベルの運動をしている人は新型コロナウイルスによる感染や重症化のリスクが低い
・推奨レベルの運動とは有酸素運動と筋トレの組み合わせであり、量はウォーキングを週2~4時間に相当する。
新型コロナウイルスによる運動不足が問題視されています。運動不足は肥満、生活習慣病、肩こり・腰痛などに関係することはもちろんのこと、どうやら新型コロナウイルスへのリスクにも関係しそうです。
韓国での報告(1)によると、「推奨レベル」の十分な運動をしている人は、そうではない人と比較して、新型コロナウイルスの感染や重症度に対して以下のような違いがみられました。
・感染リスク:15%低い
・重症化リスク:58%低い
・死亡リスク:76%低い
このように身体活動の違いは新型コロナウイルスに関しても有益であるという結果となっています。この結果について、この論文では運動による免疫機能の維持や、感染にかかわる(そして血圧上昇にも密接にかかわる)ACEの発現が運動によって低下することが要因であるとしています。
もちろん、定期的な運動をしている人は健康への意識が知識が高く、感染対策もしっかりしているということや、定期的な運動をしている人は単純に体力が強い人が多いという「結果論」の可能性もありえますが、(適度な強度と量の)運動はすべての人にとって有益であり、有効性がはっきりしていない成分を摂取することに比べると大いに期待できる内容でしょう。
なお、この調査における「推奨レベルの運動」とは、以下のような内容でした。
・有酸素運動と筋トレの組み合わせが最もよい。
(片方だけだと効果は薄くなる)
・500~1000MET分/週が最適で、それを超えると効果がやや落ちる。
(※汎用される「時間」単位だと、8.3~16,7METS時間/週となる)
このように運動の種類や量も効果が影響していることがわかります。この解釈は難しいのですが、運動量が多すぎるとむしろ免疫機能には悪影響を及ぼすことや、運動量が多い人は社交性が高く、感染リスクが悪化してしまうことが影響しているかもしれません。
では、「500~1000MET分/週」とはどの程度の運動なのでしょうか?これは国立健康・栄養研究所のMETs表(2)を参考にするとよいでしょう。単純計算では、やや早歩きのウォーキング(4METs/時間)換算で2.1時間~4.2時間に相当します。
報告の「推奨レベルの運動」をするためには筋トレも採用する必要があります。仮に筋トレ(6MEST/時間)を週1時間行うとすると、有酸素運動を35分~2時間40分/週 程度追加すればよいということになります。これは忙しい人でも現実的にできる量ではないでしょうか?
健康増進のために運動をしようとしている人に役立てば、幸いです。
参考文献
(1)Br J Sports Med. 2021 Jul 22;bjsports-2021-104203. doi: 10.1136/bjsports-2021-104203. Online ahead of print.
「Physical activity and the risk of SARS-CoV-2 infection, severe COVID-19 illness and COVID-19 related mortality in South Korea: a nationwide cohort study」
(2)国立健康・栄養研究所HP:改訂版『身体活動のメッツ(METs)表』
https://www.nibiohn.go.jp/files/2011mets.pdf
ハイスピードトレーニングで追い込まずとも高齢者の筋力向上に役立つようだ。
要約
・一般的な追い込む筋トレでも、追い込まないハイスピードトレーニングでも高齢者の「使える筋力」は向上する。
・追い込まないハイスピードトレーニングには楽なうえに、トレーニング中の血圧への負荷が低いという特徴がある。
・ハイスピードトレーニングは関節には負担があるので、よく準備体操を行い、関節に不安がある部位では行わないようにしよう。
昔とは異なり、高齢者に対する有効性が分かったことから、高齢の人も筋トレに取り組もうという人が増えています。高齢者が筋トレを行う際に満たすべき内容として、
・日常生活の動作の改善や生活習慣病の改善に役立つ
・楽に行える
・血管や関節への負荷が小さく、安全性が高い
という3つの点に注意する必要があります。しかしながら、一般的な筋トレではこのように指導することが多いでしょう
・8~12回できる高重量を用いる
・ギリギリまで追い込む
このようなトレーニングは効果的ではありますが、高重量を使うため関節への負担が大きく、強く力むことから運動最中の血圧が上がるという難点もあります。また、ギリギリまで追い込むのはキツイため、人にとっては継続できないことも多いでしょう。
このような通常の筋トレメニューではなくとも、軽くてしかも限界まで追い込まなくとも身体機能を高めることは可能です。それは、軽めの重量を用いる代わりにハイスピードで重りを動かせばよいのです。
2021年にItamar P Vieiraらにより発表された研究では(1)、平均年齢67.8歳の被験者をランダムで
・10~12回がギリギリできる重量で追い込むトレーニング。動作のスピードは2秒で挙げ、2秒で降ろす(伝統的トレーニング)
・最大重量の40~60%で6回~8回の挙上を行う。挙上時はできる限りハイスピードで行い、2秒で降ろす(ハイスピードトレーニング)
という2群に分けて、週2回、8週間のトレーニングを行いました。種目は45°レッグプレス、デッドリフト、チェストプレス、ラットプルダウンで構成され、セット間の休憩は90秒でした。
その結果は以下になります。
・レッグプレス、チェストプレスの筋力は伝統的トレーニング群の法が効果が高かった。ハイスピードトレーニング群ではレッグプレスの筋力向上はみられたが、チェストプレスの筋力は向上しなかった。
・椅子から立ち上がる筋力、立ち上がって歩く筋力、メディシンボール投げの筋力は両群ともに同程度向上した
・一部気分の改善が両群ともに見られた
この実験ではレッグプレスやチェストプレスの筋力向上については伝統的トレーニングに軍配が上がりましたが、立ち上がる、歩く、物を投げるといったいわゆる「使える筋力」についてはどちらも同程度という結果になりました。
実際にやってみると実感すると思いますが、今実験での「ハイスピードトレーニング」とは非常に楽なトレーニングです。デッドリフトを10~12回ギリギリまでというのは日常的に筋トレをやっている私でもキツく、高齢者にさせるというのはかなり無理があるように思いますが、最大重量の40~60%で6~8回というのは割と簡単にできてしまいます。
このことを科学的に示した文献を探したところ、この手のハイスピードトレーニングは楽で、さらによいこと動作中の血圧増加も少ないという利点があると示されています(2)。よって、ハイスピードトレーニングは高血圧の人にもリスクが少ないトレーニングとも言えます。
ハイスピードトレーニングは関節に負荷が高いという難点があるので、準備運動はしっかりと行い、関節に不安がある場合はスロートレーニングのような負担の少ないトレーニングを採用するのがよいでしょう。また、上半身は伝統的トレーニングでしっかりと行い、下半身はハイスピードトレーニングで行うというのも効率的でよい考えだと思われます。トレーニングにも流行りの「生産性」を意識して行うのもよいでしょう。
参考文献
(1)2021 Itamar P Vieiraら「Effects of High-Speed Versus Traditional Resistance Training in Older Adults」
(2)1998 中村 夏美らデサントスポーツ科学vol.19 「血圧の連続測定から見た中高齢者のレジスタンストレーニングの安全性」
ミノキシジルは濃すぎると逆効果!
要約
リアップなどで有名なミノキシジルだが、10%では効果がないうえに副作用発生率が高い。
物事を科学的に見ることは大切です。なぜならば「理屈上正しく思えること」が実際の場面では役に立たなかったり、そればかりか逆効果であることも少なくないからです。その例として発毛薬として有名なミノキシジルを上げましょう。
ミノキシジルはリアップで有名な発毛薬です。宣伝のためリアップX5プラスローションやロート製薬のリグロEX5、アンファーのメディカルミノキが有名だと思われますが、実際には無印のリアップEX、小売店で販売されているPB品、東和薬品のミノアップ(どうやら楽天のみで販売されている模様)の方がミノキシジル5%での比較なら安いようです。
日本での販売されている製品ではミノキシジル1%とミノキシジル5%のものがあります。 大正製薬のHPを見ると、1%のものよりも5%のものの方が効果が高いようです(1)。また、海外の文献ではミノキシジル5%はミノキシジル2%よりも効果が高いというデータがあり、とにかく髪の毛に対して効果が欲しいという人は5%を選択した方が良いということになります(2)。
しかしネットを見ていると、海外ではミノキシジル12%の製品もあるようです。詳しくは触れませんが、「5%に比べると明らかに効果がある!」というようなことを述べているケースもあります。濃ければ濃いほど効果的ということは受けいられやすい考えです。しかし、本当に濃ければ濃いほど効果的なのでしょうか?
どうやらエビデンスに基づくと、わざわざ10%以上のミノキシジルを使う理由はなさそうです。2019年に発表された文献では男性型脱毛症の人を対象としてプラセボ、ミノキシジル5%、ミノキシジル10%の外用薬の効果を比較しています(3)。その文献の結果は興味深いもので
プラセボ 頭頂部、前頭部ともに特に変わらなかった
ミノキシジル5% 頭頂部、前頭部ともに髪の本数が増えた
ミノキシジル10% 前頭部の髪の本数は増えたが、頭頂部の本数は変わらなかった。前頭部の髪の本数に関しては、ミノキシジル5%と差はなかった。
という結果になっています。驚くべきことに、試験の中では中間濃度であるミノキシジル5%が一番効果的ということになったのです。ミノキシジル10%は効果が5%に劣っているだけではなく、刺激感などの副作用発生率が高く、治療を継続できなかったという欠点があることまでわかっています。すなわち、ミノキシジルに関しては10%という濃度は濃すぎるためにふさわしくない設定であるといえそうです。
食事法も運動もそうですが、やればやるほど効果があるわけではなく、実際には適量があることが科学的には明らかとなっています。メディアの情報をうのみにするのではなく、試験を行ってくれている先人の試験をPub Medなどで調べることが重要となってくるでしょう(とは言いつつ、発表された論文も様々な要因で覆ることもあるので注意が必要なんですけどね)。
参考文献
(2)2002 J Am Acad Dermatol「A randomized clinical trial of 5% topical minoxidil versus 2% topical minoxidil and placebo in the treatment of androgenetic alopecia in men.」
(3)2019 J Dermatolog Treat.「Efficacy and safety of a new 10% topical minoxidil versus 5% topical minoxidil and placebo in the treatment of male androgenetic alopecia: a trichoscopic evaluation.」
高容量のビタミンDサプリメントはダイエットに逆効果の恐れ
要約
・中年男性が高容量ビタミンDサプリメントを摂るとインスリン感受性の低下を引き起こした
・血中ビタミンD濃度が低い人の場合は、高容量のビタミンDサプリメントを摂ると腹の脂肪が増えてしまった
ビタミンDはカルシウムの吸収や骨の健康維持に重要なビタミンであることが良くしられています。また、多くの研究からビタミンDが不足している人はがん、糖尿病、心血管病や認知症などさまざまな疾患のリスクが高いことが知られており、とても注目されているビタミンです(1)。そのため、ビタミンDサプリメントでさまざまな疾患が予防できるのではないかと期待されています。
しかしながら、ここ最近でも有力医学誌ではビタミンDサプリメントを摂取しても糖尿病や心血管病のリスクに特に効果がないという発表が相次いでいます(2,3)。ビタミンDは安くて服用しやすいために大きな期待がかかっていましたが、残念な報告も多いようです。そればかりか、大量のビタミンDの摂取は逆に太る恐れがあることさえ示されたのです。
2019年に発表された論文では(4)、20,000 IUという相当量のビタミンDが中年(平均年齢45歳)男性対象血糖コントロールや体組成に与える影響を調べました。その結果は驚くべきことで
・インスリン感受性が低下した
・実験開始時に血中25(OH)D (要するにビタミンDのこと)濃度が50 nmol/L 未満の人は体脂肪や腹回りの脂肪が増えてしまった
という期待とは逆の効果となってしまいました。ビタミンDは薬理学的には筋肉を増やすことが期待されているので(5)、このような結果になってしまったのは驚きです。しかしながらこの試験は参加者200人とこの手の試験にしてはかなり多く、信頼性は高そうです。
ビタミンDの欠乏は公衆衛生上危惧されていますし、一部効果がでている報告も見られます。しかしながら、20000IUという推奨量をはるかに超えるビタミンDの常用は健康のみならず、ダイエットにも逆効果になる恐れがあるということは知っておいた方がよいでしょう。「メガビタミン理論」も注意をしなければならないという一つのエビデンスをこの論文は提供してくれているのです。
参考文献
(1)2017 Rev Endocr Metab Disord.「The vitamin D deficiency pandemic: Approaches for diagnosis, treatment and prevention.」
(2)2019 N Engl J Med「Vitamin D Supplementation and Prevention of Type 2 Diabetes.」
(3)2019 N Engl J Med「Vitamin D Supplements and Prevention of Cancer and Cardiovascular Disease.」
(4)2019 Nutrients「Effects of Vitamin D Supplementation on Body Composition and Metabolic Risk Factors in Men: A Randomized Controlled Trial」
(5)2015 Biomed Res Int.「Vitamin D: a review on its effects on muscle strength, the risk of fall, and frailty.」
アルギニンと成長ホルモン②筋トレ前に摂ると逆効果かもしれない
要約
筋トレ前にアルギニンを摂ると、運動による成長ホルモン増加作用が損なわれてしまう恐れがある。
筋トレ初心者だったころの私はアルギニンは成長ホルモン増加作用があるということを薬理学かなにかの本で発見して飲んでいました。アルギニンはとても不味い(正確には苦い)のですが、これも筋肉のためのがまんしていました。しかしながら、アルギニンの成長ホルモン増加作用は注射によるものであり、筋トレ前に飲んで効果があるかどうかもわからず飲んでいたのでした。そして、その努力はもしかすると逆効果だったのかもしれません。なぜなら、筋トレ前にアルギニンを摂ると、成長ホルモンホルモンには逆効果である可能性が高そうだからです。
この理由を一目で示したのが以下の図です(1)。これは筋トレを行っている男性を対象として、運動およびアルギニンの摂取が成長ホルモンに与える影響を調べています。左からプラセボ、7gのアルギニン摂取、筋トレ、7gのアルギニン摂取と筋トレの組み合わせとなっています。
文献(1)より引用
面白いことに、アルギニンサプリメントや筋トレは単独では成長ホルモン増加作用がある一方で、アルギニンと筋トレを組み合わせると相加効果があるばかりか筋トレ単独の場合よりも成長ホルモンの増加が鈍化していることがわかります。成長ホルモン目的であるならば、筋トレ直前にアルギニンを摂るのは逆効果と言えてしまいそうです。
なぜこのようなことになってしまったのでしょうか?この現象はまだよくわかっていないのが実状です。
「アルギニンが成長ホルモンの負のフィードバック機構に(詳しくは生物系の人に聞いてみよう)影響しているのではないか?」
という仮説のもと行われた研究では、アルギニンは成長ホルモンの分泌促進に関してマイナスの影響は示さなかったことから、その可能性は否定されています(2)。よって、未だにメカニズム不明という状況です。
というわけで、少なくとも成長ホルモン目的ならば筋トレを行う直前はアルギニンを避けた方がよいということになります。私が知る限りでは、単独で運動と組み合わせることで成長ホルモン分泌効果を促進させるのはGABA(3)とα-GPC(4)ですが、GABAは3000mg、α-GPCは600mgとかなりの量を摂取しており、これは予算に余裕がある人のみ行うほうがよいでしょう(GABAをこれほど大量に摂って運動して大丈夫なのか?と
思いますし)。どのみち筋トレで成長ホルモン増加が期待できるので、こだわりがなければフツーに筋トレのみがよいと思います。
さて、このままではアルギニンサプリを販売している会社の人に怒られてしまいそうなので(笑)、近々、「アルギニンに他の成分と組み合わせれば成長ホルモン増加作用が期待できるかも」という話を紹介しましょう。
参考文献
(1)2006 J Appl Physiol 「Oral arginine attenuates the growth hormone response to resistance exercise」
(2)2014 International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism「Oral L-Arginine Before Resistance Exercise Blunts Growth Hormone in Strength Trained Males」
(3)2007 Medicine & Science in Sports & Exercise「Growth Hormone Isoform Responses to GABA Ingestion at Rest and after Exercise」
(4)2008 Journal of the International Society of Sports Nutrition「Acute supplementation with alpha-glycerylphosphorylcholine augments growth hormone response to, and peak force production during, resistance exercise」
アルギニンと成長ホルモン①単独で摂取するどうなのか?
要約 運動を組み合わせない場合、成長ホルモン目的でアルギニンサプリメントを摂る場合は以下のことを留意したほうがよい
・成長ホルモンを増やすという報告とそうではないという報告がある
・1回5~9g摂取することが多いので、目安にするとよいかもしれない
・1回13gという大量の摂取は効果がない
トレーニング愛好家の中でよく用いられるのがアミノ酸です。その中でアルギニンは俗に「成長ホルモンを増加させる作用がある」と呼ばれ、特にボディビルダーに好まれてきました(ボディビルダーはパンプ目的のこともありますが)。
成長ホルモンは脂肪燃焼を促進し筋肉を増やす作用があることから(1)、スポーツ選手だけではなく、美容目的で増やしたいという人も多くいます。そのため成長ホルモンを増やすという文言は実に魅力的に思います。それでは、成長ホルモン目的でアルギニンを摂取することは果たして意味のあることなのでしょうか。
アルギニンはソマトスタチンと呼ばれる成長ホルモン抑制因子を抑えることで成長ホルモンを増加させる働きがあります(2)。そのため成長ホルモンの分泌がうまくいっているかを調べるためにアルギニンを用いることもあります。しかしながら、この検査は注射でアルギニンを投与するものであり、サプリメントとして摂取する場合に効果があるかどうかは議論がわかれています。
実は口からサプリメントとしてアルギニンを摂取した場合効果があるという報告とないという報告があり、本当に効果があるかどうかはよくわからないのが実状です。男性を対象とした試験では効果がなかったという報告(3,4)が複数ある一方で、閉経後女性では成長ホルモン増加作用があったという報告もあります(5)。どうやら性別やホルモンの状況によって、アルギニンが成長ホルモンに与える影響は変わってきそうです。
さらに、成長ホルモン増加に役立ったという文献をみると、5g、9g、13g摂取した場合には5g、9g摂取の場合に成長ホルモン増加作用が見られた一方で、なんと13g摂取した場合は効果がないという結果となっています(6)。成長ホルモン目的でアルギニンを利用する場合は、やみくもに大量に摂ればよいというものでもないことがわかります。
このようにアルギニンと成長ホルモンの関係はなかなか一筋縄ではいかないものなのですが、これに運動やほかのアミノ酸を組み合わせるとさらにややこしいことになります。場合によってはアルギニンが逆効果になるという話もあったりします。これに関してはまたまとめることにしましょう。
参考文献
(1)2013 Sports Med「Obesity, Growth Hormone and Exercise」
(2)1988 Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism「 Arginine stimulates growth hormone secretion by suppressing endogenous somatostatin secretion. 」
(3)2011 Appl. Physiol. Nutr. Metab「The acute effects of a low and high dose of oral L-arginine supplementation in young active males at rest」
(4)2007 Arq Bras Endocrinol Metabol.「[Effect of L-arginine supplementation on secretion of human growth hormone and insulin-like growth factor in adults].」
(5)2000 J Lab Clin Med 「Endocrine and lipid effects of oral L-arginine treatment in healthy postmenopausal women.」
(6)2005 Growth Horm IGF Res. 「Growth hormone responses to varying doses of oral arginine.」
MCT(中鎖脂肪酸)で高齢者の筋肉強化?
要約
・1日6gの中鎖脂肪酸で高齢者の筋力が強化される
ぼーっとyoutubeを見ていると、広告でずいぶんと日清の宣伝が流れてきました。宣伝されているものはMCT(中鎖脂肪酸)と呼ばれるもので、以下のような商品を中心に取り扱っているようです。
このMCT、興味深いことにAmazonのカテゴリーでは「介護用品」となっています。メーカーのHPではエネルギー補給に役立つと宣伝しており、写真に高齢者が多く映っていることから高齢者向けに販売をしたいという意図を感じます。
これまで、MCTはエネルギーとして使いやすい油であるということしか知っておらず、後輩(農学部で生物に関しては私より詳しかったかも)が低炭水化物で減量をした時に使っていたなあくらいの印象しかありませんでした。
しかしながら、どうやら単に栄養補給以外の効果もあるようです。2019年のThe American Journal of Clinical Nutrition(1)ではココナッツオイルがフレイル(虚弱)の高齢者の筋力に与える効果を検討しています。1日6gのMCTを食事に混ぜて食べることを3か月続けた結果、対象(普通の脂肪酸を6g摂取)と比較して
・筋力の増加が見られた
・日常動作での自立のスコアが改善した
という興味深い改善が見られたという結果となりました。油摂っているだけなのになぜ筋力が増えるのか?という疑問に対しては
・MCTの中にはグレリン(成長ホルモンの分泌を促し、食欲を増やすホルモン)を活性化させる成分が含まれている(2)
というメカニズムが考えられると紹介されています。このメカニズムを考えると、ダイエット時に用いるものと考えられていたMCTはむしろ筋肉の増量の方に役立つ可能性が高いといえそうです。
MCTは飽和脂肪酸なのでコレステロールが気になると思っていたのですが、動物由来の調査脂肪酸に比べると影響は少ないという報告もでており(3)、脂質の値に関してもそこまで気にしなくてもよいかもしれません。
高齢者は食が細くなり筋肉が減りがちです。その対策の王道は筋トレと十分なタンパク質の摂取ですが、MCTの追加もなかなかよい考えかもしれません。(流石に海外製は安い・・・)
参考文献
(1)2019 Am J Clin Nutr 「Medium-chain triglycerides (8:0 and 10:0) are promising nutrients for sarcopenia: a randomized controlled trial」
(2)1999 Nature 「Ghrelin is a growth-hormone–releasing acylated peptide from stomach.」
(3)2019 Clin Nutr「Medium-chain fatty acids lower postprandial lipemia: A randomized crossover trial.」