ビタミンDのサプリを摂れば血圧や心血管病のリスクが下がるわけではない。
要約
・厳密な試験では、ビタミンDのサプリメントでは心血管病のリスクは下がらない。
SNSをぼーっと見ていると、このような記事を見つけました。
ビタミンDの健康への利点を述べており、ビタミンDが低いことは心血管病や総死亡リスクが高いことと関連していることを述べています。ビタミンDが役に立つサプリメントであるのは間違いないことです。ビタミンDをサプリメントとして摂取することで上気道感染(のどにくる風邪。インフルエンザも含む)のリスクが下がるなどの効果があり(1)、まさしく冬の時期に役立つサプリと言えます。
しかしながら、「血圧に役立つ」という文章には疑問点がいくつもあります。例えば、アメリカの心臓専門誌に発表されたA Systematic Review and Individual Participant Meta-Analysis(要するに質の高い調査)では(2)、900IUから5000IUのビタミンDを4~12週間摂取しても血圧やその他心機能について特に影響がなかったと示されています。
また、2019年に世界最高峰の医学誌The New England Journal of MedicineでビタミンDサプリメントの摂取ががんや心血管病のリスクに与える影響を調べる大規模な試験が行われましたが(3)。25000人以上を対象としたがんや心血管病に関して特に影響は見られなかったという残念な結果になってしまっています。
この記事の根拠となった本が出版されたのは少し前のことなので、結果が覆るのは仕方ありません。しかしながら、ビタミンDで血圧も心血管病も安心!というわけではないことは知っておいた方がよいでしょう。
ビタミンDのサプリメントは間違いなく有用なサプリメントであり、私も摂っています。しかし、血圧や心血管病のリスク低減目的なら、DASH食に近い食事を心がけて食物繊維や各種ミネラルを豊富に摂ることを心がけた方がよいでしょう。
参考文献
(1)2017 BMJ 「Vitamin D supplementation to prevent acute respiratory tract infections: systematic review and meta-analysis of individual participant data.」
(2)2018 J Am Heart Assoc.「Effect of Vitamin D Supplementation on Markers of Vascular Function: A Systematic Review and Individual Participant Meta-Analysis.」
(3)2019 The New England Journal of Medicine「Vitamin D Supplements and Prevention of Cancer and Cardiovascular Disease」