断食は科学的に見て良いダイエット法なのか?(この論文を見ていなくても、私はやらない。)
要約
・断食とカロリー制限食の体重減少効果は同程度である。
・断食には脱水や頭痛などのリスクがある。
・断食の優位点はわずかであり、その優位点はちょっとした代替案で十分達成できる。
ダイエット法として有名なものに断食があります。ファスティングのようにジュースやスープのみ摂る方法もあれば、水以外なにも取らないという方法もあります。確かに断食を行えば大幅なカロリーカットができるので痩せることは可能でしょう。
しかしながら、このような食事法はたんぱく質やミネラルが不足することは明らかです。長期にできるものではありませんし、夏場に行ったら脱水症状やミネラル不足で倒れてしまうかもしれません。
断食を行うということは血糖値が大きく下がり空腹感を感じるというわけですが、空腹感は片頭痛のリスク因子の一つであることが日本でのガイドラインでもしめされています(1)。私のクライアントからも、流行りの本の影響で断食を試した結果、とてつもない頭痛と冷や汗で仕事を早退するはめになったと相談がありました(もちろん、断食はやめてねと返答したわけですが)。
このようにリスクが高い断食ですが、そのリスクに見合う効果はあるのでしょうか?ちょうど断食※と通常のカロリー制限食を解析した論文(2)を見つけたので紹介しましょう。
※正確にはIntermittent energy restrictionで、週に何日かはカロリーを75%以上大幅にカットする食事法を指します。カロリーカットした時の摂取量は女性は1日500kcal未満、男性は1日660kcal未満となっていますので、一般的な断食・ファスティングに近い方法と言えるでしょう
この論文の解析の結果、断食とカロリー制限食を比較した場合、
・体重の変化量 差なし
・体重の変化割合 差なし
という結果になりました。なんと、ダイエット効果に関しては、断食をやろうがカロリー制限食をやろうが同じだというわけです。健康診断で用いる検査値についても解析がありましたが、
・血糖値 差なし
・各種コレステロール 差なし
という結果となり、健康に関してもあまり期待ができなさそうです。インスリンの効き具合に関しての指標は断食の方が優位点があったという話がありますが、それなら運動をした方が副作用も少ないですし、糖尿病や心血管病の予防に役立つというエビデンスは無数にあります。
今回行われた断食にはひどい副作用はそれほど見られなかったとありますが、エネルギー不足、頭痛、寒気、便秘、口臭などが報告されていますので、断食や大幅なカロリーカットをした場合にこのような症状にあった場合は中止すべきでしょう。
さらに、研究では栄養学に精通した専門家の指導のもと行っているので比較的安全性は高いですが、巷の断食やファスティングは栄養や医学に精通していない者が指導していることもあるので注意が必要です。海外では一部の栄養素が欠乏したダイエットを行ったために死亡者までだしたという報告を見たことがあります。
科学的知識をもてば、リスクのある断食などしなくても十分にカロリーカットをすることは可能です。食べる楽しみを放棄してまで行うことではないのです(一時期流行ったアニメみたいなことを言っている)。
参考文献
こちらからPDF版も見れます(PDFで容量はかなり大きいので注意!)
www.jhsnet.org
(2)2018 J Transl Med.「Intermittent versus continuous energy restriction on weight loss and cardiometabolic outcomes: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials.」