筋トレこそが最強の薬である。

京大バーベル部卒の薬剤師が筋トレや食事法中心に、健康に役立つ情報を紹介します。

長期的な視点をもてば、低炭水化物ダイエットも低脂肪ダイエットも効果は特に変わりはない

要約

12か月にわたる低炭水化物と低脂肪食がダイエットに与える影響を比較した試験から以下のことがわかった。

・ダイエット効果に差はなかった。

・肥満に影響するとされる遺伝子の違いでダイエット効果に差はなかった

低炭水化物食ダイエットは人気のあるダイエット法です。私も学生時代、ボディビルの大会に出るために極限に近い低炭水化物食ダイエットを行い、かなりの減量に成功しました。この時は体形のあまりの変化に、これほどすごいダイエットはないと感じたものでした。

 しかしながら、低炭水化物食ダイエットは費用や手間がかかり、長期間続けるのは非常に難しいダイエット方法です。また、低炭水化物食をするがために他の人とのランチやディナーを避けて社交性を失うというのは不健全と言えます(特にボディビルダーに多いように感じる)。

 それが嫌だったので、今回は普通に炭水化物を摂っていましたが、過去最高に絞ることが出来ました。どうやら普通に炭水化物を摂っても、ある程度時間さえかければ普通に痩せることができるようです。さて、この体験は私に限ったものなのでしょうか?

 有力医学誌として高名なJAMAで発表された論文によると(1)、どうやら私の経験は科学的にも整合性が取れているようです。この研究では

・炭水化物30%、脂肪45%の低炭水化物食

・炭水化物食48%、脂肪29%の低脂肪食

の健康的の減量食がダイエット効果に与える影響を検討しました。ここで言う「健康的」とは野菜の摂取量はしっかりと増やし、精製された糖や炭水化物やトランス脂肪酸は避け、できる限り加工食品をさけて自炊を心がけてもらうというものでした。

 この食事を12か月間行った結果、

・体重、体脂肪、ウエスト周囲など体形に関わる数値には統計的に有意な差はなかった。

・低炭水化物食はHDLコレステロールの増加と中性脂肪の低下という良い影響があった一方で、LDLコレステロールの増加という気になる変化も見られた。低脂肪食は脂質の値には特に影響しなかった。

・肥満に関わると考えられる遺伝子の違いで各食事に対するダイエット効果は変わらなかった。

ということが示されました。血中脂質に関しては多少差が見られましたが、ダイエット効果に関しては差が見られなかったというのが長期での質の高い試験からの結論です。また、肥満に関わる遺伝子とダイエット効果に差が見られなかったということなので、遺伝子検査では肥満遺伝子は特に調べなくてもよいということにもなります。

 ダイエット方法は多数あり、効果の優劣はまだわからず、「これこそが究極」というものはまだ存在しないと言っても過言ではありません。また、炭水化物の摂取が少ないことは手間や費用がかかるだけではなく、健康上も懸念があります。

pharmuscle.hatenablog.com

ならばダイエット中であっても臨機応変に対処し、友人との食事を楽しんだ方がスマートと言えるでしょう。

(とまあ偉そうなこと言ってますが、減量期に飯を食っていた時は「臨床試験」と銘打ってカロリーカットサプリをガンガン摂取して呆れられていたのですがね)

参考文献

(1)2018 JAMA「Effect of Low-Fat vs Low-Carbohydrate Diet on 12-Month Weight Loss in Overweight Adults and the Association With Genotype Pattern or Insulin Secretion」