善玉菌で酒による肝臓へのダメージが減るかもしれない。
要約
・アルコールによる肝臓へのダメージには、腸内環境が大いに関わっている。
・アルコールで肝臓にダメージがある人が善玉菌を摂ることで肝臓の炎症が抑えられたという試験があるので、試してみてもよいかもしれない。
引き続き部長のために酒飲みに役立つ成分はないかと調査中。そうすると、どうやら善玉菌が役に立ちそうなので、紹介しようと思います。
アルコールによる肝臓へのダメージはさまざまなものがあり、アルコールが肝臓での脂肪蓄積を促進したり、アルコールが代謝されてできたアセトアルデヒドが肝臓にダメージ与えたりするなど、アルコールが直接関わるものが有名です(1)。
しかしながら、肝臓への直接のダメージだけではなく、アルコールが腸にダメージを与えることで、結果として肝疾患につかがることも示されています(2)。
例を挙げると、
・アルコールによって腸の防御機構が損なわれる。
・アルコールによっていわゆる善玉菌が減少し、いわゆる悪玉菌が増加する。
・アルコール肝疾患の人には腸内の悪玉菌に由来する炎症性物質の血中濃度が高い。
など、なかなか興味深い現象が示めされています。詳細が気になる人は(2)の文献を読むか、私をパーソナルトレーナーとして呼ぼう(ダイマ)。
過度なアルコールは腸にダメージを与えるため、大腸がんの原因になることが日本人を対象とする調査からも示されていますが(3)、腸のダメージは巡り巡って肝臓へのダメージにもつながっているようです。
善玉菌を摂ることでアルコールによる肝臓へのダメージが減ったというヒト試験も出てきており、VSL♯3(要はヨーグルトに含まれている菌)やアッカーマンシア ムシニフィラと呼ばれる菌(ヤクルト中央研究所の解説が詳しい。これは日本の市場では見つけることができなかった・・・)が肝臓へのダメージを抑えることが期待されているようです(4,5)。
データ上は有望ですが、まだ医薬品として承認がないので、
「肝臓がやばいから乳酸菌とっとこ」
というわけにはいかないのが現状です。
しかしながら、アルコールを摂っている人は腸内環境が悪化しがちであることは科学的にもわかっているので、おなかの調子を整えるためにヨーグルトを摂ったり、善玉菌のサプリメントや整腸剤を摂ることはとてもよいことだと思います。
余談
昔ながらのビオフェルミンを買おうとしたら、最近はAmazon製の整腸剤もある模様。乳酸菌の量は変わらないようだし、錠数はAmazonの方が多く、しかもこれだけ安いというのだから製薬メーカーは大変である。
デス・バイ・アマゾンは日本の市販薬メーカーやドラッグストアも標的なのだ。(なんという締めくくりだ)
参考文献
(1)2015 日消誌「アルコール性肝障害の病型 ―欧米との相違と問題点―」
(2)2018 Clinical and Molecular Hepatology 「Microbiota, a key player in alcoholic liver disease」
(3)2008 Am J Epidemiol「Alcohol drinking and colorectal cancer in Japanese: a pooled analysis of results from five cohort studies.」
(4)2005 J Clin Gastroenterol「Beneficial Effects of a Probiotic VSL#3 on Parameters of Liver Dysfunction in Chronic Liver Diseases」
(5)2018 Gut「Recovery of ethanol-induced Akkermansia muciniphila depletion ameliorates alcoholic liver disease 」