筋トレこそが最強の薬である。

京大バーベル部卒の薬剤師が筋トレや食事法中心に、健康に役立つ情報を紹介します。

高血圧の人は運動をしても薬を飲んでも同程度血圧が下がる。

要約

・高血圧の人が運動をすると、薬を使った場合と同程度の血圧降下作用を示す。

有酸素運動でも筋トレでもよいが、最も良いのは組み合わせて運動をした場合であった。

運動が血圧の改善に役立つことは科学的な事実です。有酸素運動でもよいですし、

筋トレでもOKということがわかっています(1)。 

それでは、その効果は薬と比べてどうなのでしょうか?この質問に対する答えが最近のスポーツ科学専門誌で発表されました(2)。

 2018年に発表された運動や医薬品が血圧に及ぼす研究のネットワークメタ解析の結果、高血圧(収縮期血圧140を超える)の人が運動をした場合に下がる血圧の数値と血圧の薬を飲んだ場合に下がる血圧の数値はほぼ同じであることが示されました。

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         (2)Figure5より筆者作成

 見ての通り、収縮期血圧140mmHgを超える人の場合は運動をしても薬を飲んでも下がる血圧は大体同じであることがわかります。有酸素運動と筋トレを組み合わせて行えば、高価な血圧の薬であるARBよりも大きな効果が期待できそうです。

 ちなみに、●は正常血圧の人も合わせた場合のデータなのですが、その場合は運動をした場合の血圧の低下量はかなり小さくなっていることがわかります。このことから、運動は正常血圧の人に関してはそれほど血圧の変動を起こさないことがわかります。

 血圧の薬は正常血圧の人であっても血圧を下げてしまい、低血圧でふらつきを起こす恐れがあることが知られており、過度な降圧は脳梗塞の原因にもなりうることが血圧の薬の添付文書にさえ書いていますが、過度に血圧の薬を使用されているケースは多々見られます。そういう点でも運動は安全性が高いと言えるでしょう。

 

「血圧の薬は一生飲まなければなりません!飲まなければあなた死ぬわよ。」

と言う者もいれば、

「血圧の薬は毒であり、飲んだらガンになります。」

とあおる者もいます。

どちらもよく遭遇する表現ですが、真実からは離れており、なにより人の不安をあおるという点で看過しがたい内容です。

薬剤師およびパーソナルトレーナーとしてできる科学的なアドバイス

「運動をすれば、薬を飲むくらいは血圧が下がりますし、薬を飲むよりも健康によいです。そして、必要な運動量もそう多くはありませんよ」

となります。ぜひとも運動を選択していただきたいと思います。

 参考文献

(1)血圧の薬をやめたい人へ 降圧薬の真実

 

(2)2018 Br J Sports Med 「How does exercise treatment compare with antihypertensive medications? A network meta-analysis of 391 randomised controlled trials assessing exercise and medication effects on systolic blood pressure」