ビタミンDサプリメントを飲むだけでは高齢者の筋力は伸びない
要約
・期待に反して、ビタミンDが欠乏している高齢者がビタミンDサプリメントを1年間摂っても筋力や筋量は伸びなかった。
ビタミンDは骨折の予防を目的として用いられるビタミンとして有名です。骨折予防のメカニズムとしては、ビタミンDがカルシウムの吸収を改善することがまず思いつきますが、筋肉の強化に役立つことも要因ではないかという話もあります(1)。
それでは、ビタミンDサプリメントは単体で筋肉の改善に役立つのでしょうか?その疑問に答えてくれた研究(2)を発見できたので、紹介しようと思います。この論文では
・60歳以上の男女
・血中25-ヒドロキシビタミンD濃度が20ng/mL未満(ビタミンD欠乏症)
という条件の人を対象として試験を行っています。60歳以上ということで骨粗鬆症でビタミンDを処方されている人の状況に近いと考えられますし、ビタミンD欠乏っ状態ということなのでビタミンDサプリメントの効果が表れやすそうな条件と言えます。この被験者をランダムに2つの群に分け、
・ビタミンDサプリメントを1日800IU摂取(4か月後に血中25-ヒドロキシビタミンD濃度が28ng/mL未満ならさらに800IUを追加)
・プラセボを摂る
をという試験が行われました。試験の期間は12か月とかなり長く、信頼性は高いと言えそうです。その結果、
・ビタミンDサプリメント摂取群では平均血中25-ヒドロキシビタミンD濃度が32ng/mLを超え、ビタミンD欠乏症ではなくなった。
・プラセボでは平均血中25-ヒドロキシビタミンD濃度が20ng/mL未満と欠乏症のままだった。
・ところが、下半身の筋力や筋量に差はなかった。
という結論になっています。ビタミンDサプリメントはビタミンD欠乏症は解消したものの、筋肉の改善には役に立たなかったということになります。
これはあくまで「ただサプリメントを摂るだけ」であり、併せて筋トレを行ったり、たんぱく質などの栄養素についても改善をすればビタミンDが役立った可能性はあります。しかしながら、ビタミンDのみとって、筋肉に役立つかというと、そうではないとうことになります。
ビタミンDは有用な成分であり、値段も安くて優れたサプリメントです。しかしながら、筋肉に対してはそこまで期待してはいけないようです。やはり、筋力を伸ばすには筋トレをして、しっかりたんぱく質を摂るのが手っ取り早そうです。
参考文献
(1)2017 J Steroid Biochem Mol Biol「Vitamin D and muscle function.」
(2)2019 Am J Clin Nutr.「The effect of vitamin D supplementation on lower-extremity power and function in older adults: a randomized controlled trial 」